塗り足しの話
塗り足しの話をします。
原稿の仕上がり線の外側に付け足していただきたい3mmの余分の事です。
印刷をするとき、紙を機械の端から端までローラーで送りながら刷るので、どうしても紙がブレて0コンマ何ミリのズレは生じます。そのとき絵柄がギリギリまでしかないと、本の端に印刷の無い白い部分が線のように入ってしまうことがあります。
もともと小説などのように紙面端には余白があって数mmズレても支障がないような原稿であればまず気にらない程度のわずかなズレですが、濃い色で端まで塗られたイラストやベタのある漫画に白い線が入ると、髪の毛ほどの太さの線でもかなり目立ってしまいます。
そうなることを防ぐためデータを大きめに作ってあらかじめ余分に塗っておくのが塗り足しです。
印刷せずにwebで公開するための漫画だとこういうのは全く必要ではないので、デジタル世代の方にはなじみがないお作法かもしれませんが、印刷の時には大体必要なので、弊社では上下左右にそれぞれ3mmの塗り足しをお願いしています
青い枠が実際の本のサイズと思ってください。
この青ラインのから黒ラインまでの部分を塗り足し、とかドブ、とか言います。
(この図はわかりやすく説明するための概念図なので、A5やB5の紙面での実際の3mm幅はもっと細く見えます)
余裕を持って書いてもらっておいて、青線から黒線にかけての外枠はざっくり切ってしまうよ、ということになっています。
この青線の外の、黒線のところまできっちりしっかり絵柄を入れてよね、というのが「塗り足しを3mmつけてください」という言葉の意味です。データサイズはあるけど青線までしか塗られてなかったり、黒線のデータの端っこまできっちり塗られておらず中途半端だったりすると意味がありません。
塗り足しまで絵柄を入れておいて仕上がり線で切れる意匠の事をタチキリというので、塗り足しそのものの事をタチキリと呼ぶ人もいるようです。
右に3mm左に3mm上に3mm下に3mmつけて、合計で仕上がりの判型サイズよりも6mmずつ大きくなることになります。
ご注文時に塗り足しについて「そのまま印刷する」か「進行を止めて連絡する」かを選んでいただく設定があります。
ピンクで塗った部分ですね(ご注文フォーム/お見積もりフォームからご注文を続けていただくと2ページ目に出てきます)
これは、青ラインまでしかデータが存在しない場合や塗り足しデータが小さすぎて黒ラインに満たない場合、紙面の端に白線が出るのを覚悟でそのまま印刷する?白は出てほしくないから連絡して差し戻しする?という選択肢になります。
原稿の製作時にもっと大きく作っていたのに出力の時にうっかりB5やA5の仕上がりジャストサイズにトリミングして出力してしまっている場合などもあります。
この場合は、設定を変更して元データから再出力すればすぐに塗り足し分のあるデータが再入稿できると思うので、再入稿していただいた方が断然綺麗な仕上がりの本が望めます。
ですが、製作時から仕上がりサイズ丁度のアートボード(原稿サイズ)にしてしまっていて、そもそも塗り足しが存在しない場合、後から付け足すのはなかなか面倒くさいですよね。
ベタを塗り足すだけでもページが多いとかなり面倒ですが、主線を違和感なく引き足すとかとても面倒くさいというか難しい作業です。
特に紙の上端だと人物の髪の線であることも多いので、それを違和感なく3mm足すとか地獄のような作業になるかもしれません。
……と思うのは私だけではないらしく、進行を停めてご連絡した際、元のデータをそのまま縦横6mm拡大して再送信いただくことがあるのですが、それをすると引き伸ばされた外側3mm分が切れてしまうことになります。
それによって、セリフがかけたり重要な絵柄が切れてしまうこともありますので、最初から塗り足しを考えて作ったのではない原稿を拡大して対応する時には、必ず全ページをご確認いただき、不具合がないことをご確認ください。
これを拡大すると
こんな風に、仕上がり線内ギリギリに絵柄が拡大によって塗り足し部分に追い出されて、仕上がり線で裁ち落されてしまうと台無しになるところもあると思います。
実際はここまで極端に大きくはなりませんが……
そのページ単体で見ると不具合がなくても、内枠(前述のピンクの枠)にそろえて引いたコマの枠線が、塗り足しがないので拡大しなかった他のページの大きさとズレてしまったりもします。通しで読んでみると案外目立ちます。
メディバンペイントのデフォルト設定でA5サイズのページを作って、デフォルトガイドの内枠に合わせて四コマ漫画っぽい枠線を引いたのが左ページ。
それをA5サイズ+塗足し0.3cmのファイルにコピペして、縦横6mm分大きくなるよう104%に拡大したのが右です。
大雑把にいうとこのくらいコマの大きさが変わります
左右の幅ももちろん広がっているので、薄い紙に刷って裏面がうっすら透けて見えるとき、裏面も同じ枠のサイズの四コマ漫画だったりすると拡大したページだけ枠がずれて見えたりします。
(大きさの違いが気にならないように塗り足しのないページも一律に104%に拡大して揃えるというのも手だと思います)
後から全体の帳尻を合わせるのは本当に大変なので、くれぐれも原稿は最初から塗り足し付きサイズでの作業をお願いいたします!!
それが無かった時には、白線が出てもしょうがないということにするか、全体に拡大して紙端が切れるかもしれないということにするか、ご自身の原稿ではどちらの方がよりマシな状態になるのかということをご確認の上、選択をお願いいたします。