どうして趣味を楽しむ人をオタクと呼ぶの?
広辞苑の「オタク」の意味が改定された件
この度改定された広辞苑第七版で、説明文がまろやかな表現に改められたとTwitterなどで話題の『オタク』ですが、なぜオタクをオタクと呼ぶようになったのでしょうか?
オタクとは辞書的な語義では、ある分野に異常に詳しかったり、特定の趣味に以上に没頭するあまり社会性が欠如してしまっている人のことを指すようですが、一般的な認識としては、広く大衆文化一般の愛好者を指してオタクと言ったり、愛好するものを頭につけて〇〇オタクと言っているようです。
このオタクという言葉が定着する以前は、現在で言うところのオタクは〇〇ファンとか〇〇マニアとよばれていました。
また、同人誌を作るような漫画愛好家などはドウジンジャーなどと戦隊風に呼ばれていたこともあったようです。
すべての始まりは二人称?
さて、今や日本の文化を語る上で除外できないほどの影響を持つに至ったオタク、オタク文化ですがその歴史は1970年代後半にまで遡ります。
ちょうどその頃始まったコミケことコミックマーケットなどのイベントに、それまでご町内や学校のクラスメイトなどのウルトラローカルな範囲でしか接点がなかった漫画・アニメマニアや鉄道マニア、ミリタリーマニアが一堂に会するようになりました。
彼らが没頭している趣味は、現在と違い社会的に認知されていませんでした。むしろ迫害されていたともいえます。そんな社会的被迫害者である彼らが、大勢の同好の士に会えたのです。弥が上にもテンションは異常にアゲアゲです。普段の彼らはとてもとても内向的です。現在で言うコミュ障気味です。共通の趣味を持った同志であることは50メートル先からでもわかります。が、気安く他人に声をかけられるはずもありません。
それでも、話したい仲良くしたいという欲求が募り、なけなしの気合をふりしぼって同志戦友に声をかけた勇者があらわれました。
彼は破裂しそうな心臓の音を聞きながら、やっとの思いでひっくり返った声で呼びかけます。
「お、おたく、いい趣味してるね!」
オタク文化が花開いた!
やがて『おたく』という二人称がコミケやSF大会の参加者の間で広まってゆきます。1980年代前半には同人イベントなどで会話するマニア同志の会話において「おたく」という呼びかけはポピュラーなものになっていました。そんな様子をあるコラムニストが揶揄して彼らを侮蔑する意味合いを込め『おたく』と呼称することを提言して、コアなマニアたちは『おたく』と呼ばれ始めました。
そして1980年代も後半になると『おたく』たちは独自の文化を花咲かせ、また、創作の現場においても『おたく』たちはその潜在能力を発揮してゆくようになります。
その代表的な例が大阪のアニメオタクたちが自分たちだけで作った第20回日本SF大会通称ダイコン3のオープニングアニメを嚆矢とする一連の作品でしょう。
現在では広辞苑の用語解説がマイルドなものになってきたように、オタクに対する世間の認識からネガティブなものが随分と減ってきました。
これからもオタクとオタク文化は、ますます栄えていくことでしょう。